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File.09
小林 真理子
Mariko Kobayashi
高齢者に優しいバリアフリー
可変性で加齢に備える
 65歳以上のお年寄りの死亡事故で、最も多いのが住宅内での事故。厚生労働省の調査によると、その数は年間およそ8600件(2003年)、交通事故死の約4600件を大幅に上回っています。わが国における住宅内死亡事故の総件数は約1万1000件(同)ですから、なんと8割近くを占めていることになります。主な原因は、浴室での溺死、廊下での転倒、階段からの転落。言い換えれば、これら事故原因を取り除けば、住宅内死亡事故はかなり防げるというわけです
 高齢者や体に障害を持った人が生活するうえで、障害(バリア)となる部分を取り除くが「バリアフリー」の基本的な考え方です。床の段差をなくす、階段や廊下に手すりを付ける、トイレの扉は車椅子でも入りやすいよう引き戸にする、取っ手はレバー式。もし、ヒンジ式ドアにするなら外開き。なぜなら中で人が倒れた時、内開きでは体にぶつかって開けられないことがあるからです。最近は室内にドアが引き込まれる省スペース設計のものが登場するなど、住宅向けの関連健具が充実しており、バリアフリーの間口は広がったといえるでしょう
 バリアフリー化は、照明にも及びます。若者にとって十分な明るさの部屋でも、高齢者にとっては暗く感じるものです。だからといって明るさをアップさせると、今度は眩しくて目が疲れてしまいます。そこで私は経験上、照明は全体的に柔らかい光とし、スタンド照明で手元の明るさを補うプランを提案しています。また、暗い廊下でも安心して歩けるよう足元灯をつけ、さらにそこから発展させて壁に丸みをもたせた「アール壁」を取り入れることもあります。アールとは半径記号rのこと。どういうものかというと、缶ジュースを縦半分に割って、自分が空っぽの内側に立っている場面を想像してください。その目の前にあるカーブの壁がアール壁です。実はこれ、高齢者にとっては心理的にホッとする効果があるのです。玄関に採用すれば、お客さんの印象に残る効果も期待できます。
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